△~triangle~
「おい、寝るなら奥の部屋で寝ろ」
そうカウンター越しの男が声を掛け、カウンターにうな垂れる僕の肩を揺さぶった。
それに遠い記憶から呼び戻され、自嘲気味に笑みを浮かべる。
「……寝てないよ。ちょっと考え事してただけ」
そう言って握り締めたままの空になったグラスを差し出すと、彼は呆れた様に眉を顰めて僕の手からグラスを引っ手繰った。
彼……《仙道 和也(センドウ カズヤ)》は、この寂れたビルの地下にある、小さなバーのマスターだ。
小学校の頃の同級生で、そして僕が唯一……《友達》と呼べるような男。