△~triangle~
『明……私、行くね』
ノラはそう言って、俺を真っ直ぐに見つめた。
『……うん』
またそれだけしか答える事が出来ず、何とか精一杯の笑みを浮かべて見せる。
しかし……それはどうやら失敗した様だった。
ノラの瞳が悲しそうに揺れた。
『……明、私は……』
『いいんだ。行け』
彼女の言葉を遮ってそう言うと、玄関の扉を開き、そっと彼女の背中を押した。
それに促される様にノラはマンションの廊下へと出ると、それから静かに俺を振り返る。
……さようなら。
彼女の口から放たれるよりも早く、その言葉が頭の中で再生される。
しかし次の瞬間、俺の耳に届いたその言葉は……全く違っていた。