△~triangle~
「にゃおん」
急に聞こえた鳴き声に、儚い記憶から呼び戻される。
「にゃおん」
そう短く鳴いたシロが、床に座っている俺の目の前に、ちょこんと座った。
「……どうした?腹でも減ったのか?」
そう言ってシロの頭を撫でたその瞬間、不意に……奇妙な違和感を覚える。
それに突き動かされる様にそっと視線を動かせば、床に敷かれっ放しの布団の上で丸まっている……クロの姿が見えた。
「……クロ?」
そう声を掛けるが、クロは答えない。
「にゃおん」
その答えを教えるかのように、シロの声が静まり返った部屋の中に悲しく響いた。
そのままフラフラと布団まで歩くと、ドサッと力無く座り込み、深く息を吐く。
「お前も……遠くに行っちまうのかよ」
そう言って困った様に笑うと、そっと……冷たくなったクロの体を撫でた。