△~triangle~
「久しぶりね……元気そうでよかった」
そう言って彼女は私の目の前に立つと、そっと私の頬に手を触れる。
真っ赤なバラのよく似合いそうな彼女は上品なスーツに身を包み、微かに吹く風にサラサラの黒髪を靡かせている。
その美しい彼女の姿に、周りの人々の視線が集まっていた。
「勝手に家を飛び出したりしてごめんなさい……奈緒先生」
その私の言葉に彼女は小さく首を横に振ると、悲しそうに笑った。
「ちょっと……座りましょうか」
そう言って彼女は広場に置かれているベンチに、そっと腰を下ろす。
同じ様に彼女の横に座ると、静かに彼女を見つめた。
全てを知った今、よく見れば彼女は……蓮に似ていた。
黒いサラサラの髪も、抜ける様な白い肌も、少しだけ悲しそうに見える人形の様に整った顔も……蓮によく似ている。