△~triangle~
「私の家は母子家庭で、凄く貧乏だった。でも小学生の時にバイオリンに出会ってから、私はバイオリニストになりたいって夢を捨てられなかったの。母にお願いして一番安いバイオリンを買ってもらって、一生懸命練習をしたわ。そんな私を母も応援してくれた。生活も苦しくて大変なのに、仕事を増やしてまで私をバイオリン教室に通わせてくれた」
そう言って奈緒先生は嬉しい様な、悲しい様な複雑な顔をして、微笑む。
「中学生の時からアルバイトを始めて、私はバイオリンを続けた。それから何とか音大に入ったの。もちろん母の協力があったから入れたのよ。だから凄く感謝している……母には」
悲しそうに語り続ける彼女の言葉に、耳を傾け続ける。