△~triangle~
《僕は君の為に……何が出来る?》
父はもう一度僕に問い掛けると、そっと震える僕の手を握った。
それから静かに彼を見つめると、彼の瞳が切なく揺らいでいるのが見える。
そんな彼を真っ直ぐに見つめ返したまま、小さく口を開く。
《僕に……居場所を下さい》
その短い僕の答えに、彼は悲しそうに表情を曇らせ、それから深く頷いた。
《蓮……君が望むのなら》
彼のその答えを嬉しいと思った瞬間、どうしようもない虚しさを感じた。
……その望みには、きっと……何の意味も無い。
そんな事は、吐き気のするくらいに分かっていた事だ。
でも……願わずにはいられなかった。
《明はきっと僕を……そして貴方を許さないでしょう》
そう言って笑って見せると、彼は複雑そうな顔をして……そっと僕から視線を逸らした。
《……いいんだ。君が……望むのなら》
彼はそう小さく呟いて笑った。
その嬉しそうにも、悲しそうにも見える不思議な笑みは……やはり明に似ている。
……そう、君は僕を許しはしない。
そう心の中で小さく呟き自嘲気味に笑うと、煙突から上って行く悲しい煙を……ただ静かに見上げていた。