△~triangle~
「お~い!!次、こっちな!」
その呼び声に、また遠い記憶から呼び戻される。
そっと声の方へと視線を向ければ、雑巾を手にした和也が少し汚れた床を指差していた。
「そこらへん適当に掃いて」
「……了解」
その和也の言葉に手にしたモップを小さく掲げて見せると、和也は頷き後ろを振り返った。
「お前はいつまでサボってんだよ!!俺がグラス磨くから、お前は机を拭け!!」
そう言って和也はカウンターに肘をついたまま、気だるそうにグラスを拭いている男に雑巾を投げ付ける。
「ふぇ~い」
そんな気の抜けた返事を返すその男は、この店で働いているただ一人のバイトだ。
眩しい金髪にジャラジャラとついたピアスやネックレス、それから腕に刻まれた……蠍(サソリ)の刺青。