△~triangle~

そんな覚束ない旋律を、父は人形の様な無表情さを崩さないまま、静かに聞いている。

しかし父の瞳がいつになく真剣である事だけは、私にも分かった。

私の奏でる一音一音を、決して聞き逃さないように。

そんな父の想いが、何故だか感じ取れる気がする。

二人きりの歪な演奏会はやがて終わり、辺りにシンとした静寂が広がった。
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