△~triangle~
35 待ち続けるモノ
眩しい太陽の光が照らす、広いワンルーム。
三十畳はあるその部屋に、一人の少女の姿が見える。
それから雪の様に白い……一匹の猫。
大きな窓から差し込む日の光に照らされる少女が手にするのは、手入れの行き届いた美しいバイオリン。
少女は小さく息を吐き、そしてゆっくりと弓を動かす。
すると彼女のバイオリンから、旋律が生まれた。
それはたまにぎこちなくリズムを崩し乱れるが、少女は微かに笑みを浮かべたまま、バイオリンを弾き続ける。
まるでその旋律を誰に届ける様に。
遠い、遠い、愛しい者へと、捧げる様に。
その彼女のバイオリンの音に、傍らの白い猫は丸くなったまま、耳を澄ませている。