ケンカ+理解×大好き=友情
3·すれちがって

光が差し込まなくなった夜の自室に手早くカーテンをかけ、バッグをつかむと私は外に出た。

むわっとした空気とセミの鳴き声に包まれ夏を体感する。


バッグの中のケータイを手にし、ディスプレイを見ながら行く先の宛てもなくとりあえず歩を進めた。

マナーモードにしていて気づかなかったが、あっちゃんから大量の着信がきている。

着信履歴12件、全部、三上アマネから。


早くも流れる額の汗を不快に感じながら、すぐさま電話をかけ直す。

あっちゃんが好きだと言ってた流行りのポップスが、耳元で明るく弾けた。

それを聴きながら、ミサキの話を思い出す。


あっちゃん、いま、1人かな?

ユナちゃんと一緒にいたとしても、もう別れてる頃だよね?

だからこっちに電話してこれたんだよね?

でも、もしあっちゃんのそばにユナちゃんが居たら気まずい。

やっぱりあっちゃんからかかってくるまで、こっちから電話するのはやめとこうと通話ボタンを切ろうとした瞬間、

『なっちゃん! やっとつながったぁ!!』

と、空気が抜けた炭酸飲料みたいにフニャッとしたあっちゃんの声が聞こえた。

「ごめんごめん! いま気づいた!

あっちゃん、いま1人?

これから会える?」

『うん! 俺もなっちゃんに会いたかったんだ!』

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