ケンカ+理解×大好き=友情

「今度、ユナと京都旅行いくんだっ!」

夏休みも終盤にさしかかった頃、あっちゃんは声を弾ませてそう言った。


久しぶりにあっちゃんちに集まった私たちは、ファーストフード店でテイクアウトしたハンバーガーやチキンナゲットをテーブルの上に広げそれを口にしている。


「旅行ー? 相談があるから来たっていうのに、仲良くやってんじゃん。

ノロケなんか聞きたくないんだけど」

ミサキがからかうように言う。

昨夜あっちゃんから「ユナのことで聞いてほしい話があるから、ウチ来てくれない?」と電話で呼び出され、私とミサキはここにいる。

あっちゃんがユナちゃんと付き合ってから、こんなことは初めてだった。


入学以来、何回か来ていたあっちゃんのアパート。

今日久しぶりに足を踏み入れたワンルームの室内には、女物の雑貨がいくつか増えている。

タオルや枕カバー。香水。

男くさい部屋の中で部分的にちらばる可愛らしい生活雑貨は、やけに浮いて見える。

「これ、ユナの?」

ミサキはテーブルの隅にちょこんと置かれている化粧品を指さし、ポテトを頬張る。

あっちゃんは照れたように、

「うん。時々泊まりに来るから、そういうの置いときたいんだって」

と、答える。

ミサキはあっちゃんの答えに満足げな笑みを浮かべ、

「何を悩んでるか知らないけど、よかったじゃん。

さすがにユナも、友達時代には泊まってなんかくれなかったでしょ?」

と、うらやましそうに部屋中を見渡した。

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