リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あそこのおばちゃん、今はやってないけどな、前はツボ押しとかもやってたから詳しんだ。痛いけど、気持ちいいだろ」

話を戻して、また明子が痛いと悲鳴を上げた場所を押そうとしている牧野に、明子はむすっと口を屁の字に曲げて訴えた。

「いきなり押されたら痛いですよ、もう。ホントに涙が出そうなくらい、痛かったんですからね」
「腕の筋肉も、かなり張ってるじゃないか。だから余計に痛いんだよ」
「だって」
「押すぞ。いいな」

明子の反論も待たずに、確認したぞとふんぞり返りながら言うと、また遠慮もなく親指でツボ押ししてくる牧野に、明子は痛い痛いと言いながら、ふと君島たちから聞いた言葉を思い出して尋ねてみた。

「牧野さん、首とかマッサージされるのダメなんですか?」
「ん?」
「なんか、君島さんたちが言ってましたよ。牧野さんの肩を揉んだことありますよって言ったら、あいつは人に触られるの嫌いなんだぞって。昔からよく揉んでましたけど、ホントはイヤでした?」
「お前は平気。いやだったら、やろめって言うよ。知らないヤツは駄目なんだ。気持ち悪くて」
「君島さんたちだって、嫌がるって」
「あのお兄さんたちはおかしいんだよ。わざと人が嫌がるように触り方してくるんだよ」
「お兄さんって」

牧野のその言いように明子は思わず笑い出した。

「ジジイって言うわけにはいかねえだろ。ホント、わざと鳥肌立つようなイヤの触り方して、人をからかって面白がるんだ」

うわー、思い出しただけで首筋がムズムズしてくると、顔を顰めてぼやく牧野が明子はおかしくて堪らなかった。

「ふふふ。牧野さんも君島さんや小林さん相手だと、まだまだただの小僧ですねえ」
「うるせっ 俺が小僧なら、お前だって小娘だからな」
「いいですもん。おぱさんって言われるくらいなら、小娘のほうがずっとマシですもん」

そう反論する明子に、減らず口メと牧野はその口元をむきゅっと摘まんで笑った。
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