リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なあ、なんとかかんとか、始まってるんじゃねえのか?」
明子が痛いと抗議するより先に、牧野はそう言ってテレビを指差した。
「なんとかかんとか?」
「これこれ」
あろうことが足の指で『高杉兄弟』の切り抜きを突っつく牧野に、バカバカと明子は怒った。
「ひどいっ 足で」
牧野の狼藉を叱りながら、明子は慌ててテレビを点ける。
もう番組は半分ほど終わり、失敗したと思しき卵焼きの山を前に、困ったねえとおもしろ半分落胆半分という顔をしている末っ子と、どうしてこんな失敗作ばかりになってしまうのか判らずに憮然としている長男の姿があった。
「あー。卵焼きに挑戦したんだ。隆兄」
「たかにいって、背のデカいほうか?」
「そうです。長男役なんです。牧野さんと同じ、バツイチの長男です」
「うるせっ」
「今、お料理を覚えているんですよ。今日は大失敗みたいです」
「ヒゲ男は?」
牧野のその言葉に、明子は限界まで頬を膨らませた。
「ヒゲ男って、ひどい。牧野さんがあたしの関ちゃんに落書きしたくせに」
「なにがあたしのだ。バカ」
お前のはこれだ。
明子の腕をマッサージしていた牧野の右手に顎を掴まれた明子は、牧野の方に半ば強制的に顔を向けさせられた。
間近にある牧野の綺麗な顔に、明子の胸が必要以上に高鳴った。
(だからっ)
(こういうの、ダメなのにっ)
(ばかっ)
鼓動が牧野に聞こえているのではないだろうかと思うほど、胸が高鳴っている明子の顔を、牧野は覗き込むように顔を近づけてくる。
明子が痛いと抗議するより先に、牧野はそう言ってテレビを指差した。
「なんとかかんとか?」
「これこれ」
あろうことが足の指で『高杉兄弟』の切り抜きを突っつく牧野に、バカバカと明子は怒った。
「ひどいっ 足で」
牧野の狼藉を叱りながら、明子は慌ててテレビを点ける。
もう番組は半分ほど終わり、失敗したと思しき卵焼きの山を前に、困ったねえとおもしろ半分落胆半分という顔をしている末っ子と、どうしてこんな失敗作ばかりになってしまうのか判らずに憮然としている長男の姿があった。
「あー。卵焼きに挑戦したんだ。隆兄」
「たかにいって、背のデカいほうか?」
「そうです。長男役なんです。牧野さんと同じ、バツイチの長男です」
「うるせっ」
「今、お料理を覚えているんですよ。今日は大失敗みたいです」
「ヒゲ男は?」
牧野のその言葉に、明子は限界まで頬を膨らませた。
「ヒゲ男って、ひどい。牧野さんがあたしの関ちゃんに落書きしたくせに」
「なにがあたしのだ。バカ」
お前のはこれだ。
明子の腕をマッサージしていた牧野の右手に顎を掴まれた明子は、牧野の方に半ば強制的に顔を向けさせられた。
間近にある牧野の綺麗な顔に、明子の胸が必要以上に高鳴った。
(だからっ)
(こういうの、ダメなのにっ)
(ばかっ)
鼓動が牧野に聞こえているのではないだろうかと思うほど、胸が高鳴っている明子の顔を、牧野は覗き込むように顔を近づけてくる。