リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あいつと俺と、どっちがいいよ?」
「関ちゃん」

牧野にべーっと舌を出しながらそう即答する明子を頬を、牧野は右手の親指と人差し指で力任せに押した。
その結果、アヒルの口のようにあった明子を見て、ぶっさいくだな、お前と牧野は声を上げて笑った。
面白がる牧野の手を払おうと、じたばたと暴れだす明子の抗いをぎっちりと封じるように明子を抱きかかえた牧野に、明子はアヒル口のままバカバカバカと訴えた。

「どっちが、いい男だよ?」
「せ、き、ちゃ、ん」

明子の頬から手を離した牧野がまたそう尋ねると、どこまでも頑固な明子の口はそう即答して、また牧野に頬を押され遊ばれた。
そんなことを数回繰り返している間に、どちらともなくおしかくなって、牧野と明子は笑い出した。

「ったく。素直じゃねえな」
「牧野さんに言われたくないです」
「なんだと」

このやろうと明子の鼻を抓った牧野は、無防備な明子の足に手を伸ばして太ももを撫で回した。
とたんに、明子はその手を拒むようにまた体を硬くした。

「だからー。なんで嫌がるよ?」
「だって。こういうの、慣れてないから」

急にされれと、びっくりしちゃうんですっ
牧野の手をペシペシと叩きながら、牧野さんこそなんでこんなおイタばっかりするんですかと、明子は剥れる。

「あいつ、触ったろ?」

明子の足を撫でていた手は、牧野の手を止めようとしている明子の手を捕まえて、きつく握り締めながら、唐突にそんなことを尋ねてきた。
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