リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
まだ始業時刻前ということが幸いして、なんとか詰め寄る彼女たちを振り切って、安全圏の第二システム部に逃げてこられた。
けれど、万が一にも、牧野ファンクラブ会員をはばかることなく自称する面々が総動員している時間帯に、彼女たちのテリトリーで捕まっていたら、いったい自分はどんな目に合わされていたことか。
それを想像してげんなりとなりながら、気分転換にコーヒーを飲んで、野木たちと連れだって一階ロビーに降りてきたところだった。
亜矢子は、まだなにか明子に聞きたげな様子ではあったけれど、これから明子たちは仕事で客先に向かおうとしていることくらいは、判っているのだろう。
そうですかと小さく頷くと、いつもの受付嬢の顔に戻って「いってらっしゃい」と、耳に優しい和やかな声で、明子にそう言葉を掛けてた。
(ああ。分別ある大人っていいな)
(楽だわー)
(お嬢様だったら、こうはいかないもの)
(年は、そう変わらないだろうに。雲泥の差だわ)
そんなことを思いながら、先をいく野木たちに続くように、明子も駐車場に向かった。
営業車の運転席に沼田が座り、野木が助手席に座ってしまったため、明子は助手席の後ろの席に座ることとなった。
「北原さん、なんだって言ってたんですか?」
車が走り出すと、野木が面白そうに明子にそう尋ねてきた。
「へ? ああ、出てくるとき?」
「彼女、入社してから、何度も牧野課長にアタックして、玉砕してるじゃないですか」
「そうなんですか?! 彼女から? アタック? ホントに?」
初耳だという様子の明子に、野木は苦笑しているようだった。
「新年会とか、ああいうイベント行事で、社員が集まるようなことがあると、もうあからさまに、牧野課長にベッタリと張り付いているじゃないですか」
見たことないですかと聞かれ、明子はややばつの悪げな顔で鼻の頭を掻くしかなかった。
けれど、万が一にも、牧野ファンクラブ会員をはばかることなく自称する面々が総動員している時間帯に、彼女たちのテリトリーで捕まっていたら、いったい自分はどんな目に合わされていたことか。
それを想像してげんなりとなりながら、気分転換にコーヒーを飲んで、野木たちと連れだって一階ロビーに降りてきたところだった。
亜矢子は、まだなにか明子に聞きたげな様子ではあったけれど、これから明子たちは仕事で客先に向かおうとしていることくらいは、判っているのだろう。
そうですかと小さく頷くと、いつもの受付嬢の顔に戻って「いってらっしゃい」と、耳に優しい和やかな声で、明子にそう言葉を掛けてた。
(ああ。分別ある大人っていいな)
(楽だわー)
(お嬢様だったら、こうはいかないもの)
(年は、そう変わらないだろうに。雲泥の差だわ)
そんなことを思いながら、先をいく野木たちに続くように、明子も駐車場に向かった。
営業車の運転席に沼田が座り、野木が助手席に座ってしまったため、明子は助手席の後ろの席に座ることとなった。
「北原さん、なんだって言ってたんですか?」
車が走り出すと、野木が面白そうに明子にそう尋ねてきた。
「へ? ああ、出てくるとき?」
「彼女、入社してから、何度も牧野課長にアタックして、玉砕してるじゃないですか」
「そうなんですか?! 彼女から? アタック? ホントに?」
初耳だという様子の明子に、野木は苦笑しているようだった。
「新年会とか、ああいうイベント行事で、社員が集まるようなことがあると、もうあからさまに、牧野課長にベッタリと張り付いているじゃないですか」
見たことないですかと聞かれ、明子はややばつの悪げな顔で鼻の頭を掻くしかなかった。