リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「新年会はですね。今年は、松本のお客様のところに張り付いていた時期で欠席したんです。去年は中止だったでしょ。一昨年は、確か新年早々、私メはインフルエンザで休んでまして」

なんか、ここ最近の新年会はちゃんと出席した記憶がないかもなんですと、明子は正直に申告した。

「ああ。それじゃ見てないかな。ホントにね、一通り挨拶して回ってくると、ずっと、牧野課長の隣にいて。あれやこれやと世話をやいていて。最近の女子は積極的だよなあって、俺らなんか、もう呆れ半分で見てたんですよ、いつも」

野木からの話を半ば感心するように聞きながら、明子は面倒なことにならなきゃいいなあと、肩を落として内心でぼやいた。


(あの美人さんをフった?)
(勘弁してよ、牧野ぉ)
(どんだけ色男よ。もうっ)


頭を抱えて蹲りたい衝動を堪えながら、明子は窓の外に目を向けた。

いくつか、その手の噂話は今までにも聞きかじってはいた。
特に離婚後、数名の女性社員が牧野に告白して、玉砕したような話はよく耳にした。
しっかり実名入りで。
かなり詳細に。
けれど、その中に亜矢子の名はなかったと記憶している。
流れていた噂話などは氷山の一角らしいと、この一件で明子も悟るしかなかった。


(とりあえず。全部。牧野から聞き出さなきゃだわ)
(とやかく言うつもりはないけどね、火の粉からは逃げないと)
(触らぬ神には触らない)
(それが一番。うん)


そんなことを明子がぼんやり考えていると、野木が面倒くさそうな口調で、幸恵のことを明子に尋ねてきた。

「どうしますかね、あいつ?」
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