リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「木村くんの披露宴、沼田くんも招待されたんでしょ?」
気分を変えようと、明るい話題を選んで、明子はそんなことを口にした。
木村の披露宴の参列者は、一課と三課からは課長だけかと思っていたら、沼田も招待するつもりなのだと木村は言っていた。
そのことを世間話のようなノリで話し始めた明子に、沼田が珍しく大きな声を出した。
「どうにかしてください、あのバカっ 信じられませんよ」
明子は驚きに目を瞬かせ、沼田が腹を立てている理由を知っているらしい野木は、腹を抱える勢いで笑い出した。
「どうしたの?」
「あいつ、僕にスピーチしてくれって。そんな長くなくていいから、会社の先輩代表して。そんなの、無理に決まってるだろって。そんなことやらせる気なら、披露宴なんて、ぜったいに行かないからなって怒鳴りましたよ」
そういうことは、小杉さんにお願いしたらいいだろって言い返しましたよ。
憮然としている沼田に、さすが牧野に図太いと言われている子だわと、明子は呆れ混じりに笑った。
「んー。私も、そういうのは頼まれてもパスかなあ。やってあげれば?」
「そうだ、そうだ。やってやれ」
明子の言葉に便乗するように野木が囃したてると、勘弁してくださいという、沼田のため息混じりの声があった。
「苦手なの知ってて、嫌がらせじゃないですか」
うんざりしているような沼田の声に、木村くんにそんなつもりはないと思うけどと、明子は苦笑するしかなかった。
「私、沼田くんのそんな大きな声、初めて聞いたかも」
「俺もだな」
「沼田くんは気づいてないかもしれないけど、変わったと思うな。いいほうに」
「そうですか?」
首を傾げている様子の沼田に、明子はもう一度、変ったわよと告げた。
気分を変えようと、明るい話題を選んで、明子はそんなことを口にした。
木村の披露宴の参列者は、一課と三課からは課長だけかと思っていたら、沼田も招待するつもりなのだと木村は言っていた。
そのことを世間話のようなノリで話し始めた明子に、沼田が珍しく大きな声を出した。
「どうにかしてください、あのバカっ 信じられませんよ」
明子は驚きに目を瞬かせ、沼田が腹を立てている理由を知っているらしい野木は、腹を抱える勢いで笑い出した。
「どうしたの?」
「あいつ、僕にスピーチしてくれって。そんな長くなくていいから、会社の先輩代表して。そんなの、無理に決まってるだろって。そんなことやらせる気なら、披露宴なんて、ぜったいに行かないからなって怒鳴りましたよ」
そういうことは、小杉さんにお願いしたらいいだろって言い返しましたよ。
憮然としている沼田に、さすが牧野に図太いと言われている子だわと、明子は呆れ混じりに笑った。
「んー。私も、そういうのは頼まれてもパスかなあ。やってあげれば?」
「そうだ、そうだ。やってやれ」
明子の言葉に便乗するように野木が囃したてると、勘弁してくださいという、沼田のため息混じりの声があった。
「苦手なの知ってて、嫌がらせじゃないですか」
うんざりしているような沼田の声に、木村くんにそんなつもりはないと思うけどと、明子は苦笑するしかなかった。
「私、沼田くんのそんな大きな声、初めて聞いたかも」
「俺もだな」
「沼田くんは気づいてないかもしれないけど、変わったと思うな。いいほうに」
「そうですか?」
首を傾げている様子の沼田に、明子はもう一度、変ったわよと告げた。