リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「最近。よく階段を使っているだろ、お前」
明子が妄想の彼方に飛んでいきかけていた意識を、必死に引き寄せていることなど気づいた様子もなく、さらりとそう言った牧野に、明子は思わず目をむいた。
(なんで、それを知っているの?)
明子の視線に、牧野はにたりと笑う。それぐらいのことはお見通しだと言わんばかりの小憎らしい笑みだった。
「たまに、総務とか行って戻ってくると、息を切らしているだろ。あれじゃ、バレるに決まっているだろ」
得意げにそう言う牧野に、そんな細かいことまで、チェックしてなくてもいいじゃないと、明子はがくりと肩を落とした。
項垂れる明子に、牧野は楽しそうに言った。
「一階からウチのフロアまで登ってきても、息が切れないようになったら、高尾、連れてってやるよ」
その言葉に、明子は小さく笑った。
(連れてってやるって……)
(何様ですか、牧野様)
まあ、どうせ、ここだけの話だろうと高をくくり、明子は「それは楽しみです」と、あっさりとした声で牧野に答えた。
(牧野と、二人で高尾山?)
想像するだけで、笑ってしまいそうな光景だわと、明子は肩をすくめた。
明子が妄想の彼方に飛んでいきかけていた意識を、必死に引き寄せていることなど気づいた様子もなく、さらりとそう言った牧野に、明子は思わず目をむいた。
(なんで、それを知っているの?)
明子の視線に、牧野はにたりと笑う。それぐらいのことはお見通しだと言わんばかりの小憎らしい笑みだった。
「たまに、総務とか行って戻ってくると、息を切らしているだろ。あれじゃ、バレるに決まっているだろ」
得意げにそう言う牧野に、そんな細かいことまで、チェックしてなくてもいいじゃないと、明子はがくりと肩を落とした。
項垂れる明子に、牧野は楽しそうに言った。
「一階からウチのフロアまで登ってきても、息が切れないようになったら、高尾、連れてってやるよ」
その言葉に、明子は小さく笑った。
(連れてってやるって……)
(何様ですか、牧野様)
まあ、どうせ、ここだけの話だろうと高をくくり、明子は「それは楽しみです」と、あっさりとした声で牧野に答えた。
(牧野と、二人で高尾山?)
想像するだけで、笑ってしまいそうな光景だわと、明子は肩をすくめた。