リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】

3.心に抱えている、弱さ

明子は、ただただ呆れた顔で、目の前の光景を眺めていた。


(確かにね)
(よそではなかなか、見られない打ち合わせだわ、これ)


牧野曰くの『三馬鹿兄弟の土建屋』で、担当者が会議室に集まっての打ち合わせが始まって、一時間とちょっとが経過していた。
君島から事前に、明子が代理で出席する旨の連絡が客先にも入っていたこともあり、簡単な挨拶を交えながらの名詞交換を済ませると、それぞれが会議室の定位置についた。

そして、怒涛の。
いや、罵倒の。

それはそれは賑やかしい、打ち合わせ会議が始まった。

『三馬鹿兄弟』こと、社長、専務、常務の三人は、明子に挨拶をすると、すぐに部屋を後にした。


-社長さんたちは、会議には参加しないの?


こっそりと沼田に尋ねると、沼田はこくりと一つ頷いた。


-最初のうちは、ときどき、顔を見せるだけです。


なんとか聞き取れる小さな細い声で、沼田はそう答えを返してきた。
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