リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「申し訳ありませんが。確認作業を優先させていただけないでしょうか?」
明子の言葉に、ひとまず、総務部の面々は口を噤んだが、きっかけがあればすぐにでも戦闘再開という気配は色濃く漂っていた。
明子は、また、一つ、息を吸い、これでもかというほどの穏やかな笑みを頬に作った。
「大塚の体調不良などで、お客様方には大変なご迷惑をお掛けしてしまっていると、君島から聞かされて参りました。当初の予定では、すでに概要設計に入らせて頂いている時期であるにもかかわらず、まだ、聞き取り調査も終らせることができていないと。上司の牧野からも、これ以上、お客様方にご迷惑をお掛けすることのないよう、次回にはある程度、基本方針の指針となる資料をご提示できるよう、今日の打ち合わせでしっかりとお客様からの要望、要求を聞き取ってくるようにと命じられております。申し訳ありませんが、ご協力いただけませんでしょうか? このままですと、私、牧野に叱られてしまいますので」
彼らに口を挟ませることなく、一気に捲くしたて、最後に添えたその名に、誰がどんな反応を見せるか。
一人一人の顔を眺め見つめながら、明子はゆったりとした口調で話し続けた。
総務課の一番若そうな社員が、そんなこと知るかっと、腹ただしげにそう言って、明子を睨みつけ食って掛かってきそうな様子を見せたが、沢木の声がそれを制した。
明子の言葉に、ひとまず、総務部の面々は口を噤んだが、きっかけがあればすぐにでも戦闘再開という気配は色濃く漂っていた。
明子は、また、一つ、息を吸い、これでもかというほどの穏やかな笑みを頬に作った。
「大塚の体調不良などで、お客様方には大変なご迷惑をお掛けしてしまっていると、君島から聞かされて参りました。当初の予定では、すでに概要設計に入らせて頂いている時期であるにもかかわらず、まだ、聞き取り調査も終らせることができていないと。上司の牧野からも、これ以上、お客様方にご迷惑をお掛けすることのないよう、次回にはある程度、基本方針の指針となる資料をご提示できるよう、今日の打ち合わせでしっかりとお客様からの要望、要求を聞き取ってくるようにと命じられております。申し訳ありませんが、ご協力いただけませんでしょうか? このままですと、私、牧野に叱られてしまいますので」
彼らに口を挟ませることなく、一気に捲くしたて、最後に添えたその名に、誰がどんな反応を見せるか。
一人一人の顔を眺め見つめながら、明子はゆったりとした口調で話し続けた。
総務課の一番若そうな社員が、そんなこと知るかっと、腹ただしげにそう言って、明子を睨みつけ食って掛かってきそうな様子を見せたが、沢木の声がそれを制した。