リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「現システムの調査資料は、僕が作ります」
明子をまっすぐに見て、沼田はそう告げた。
「水曜の朝までには、小杉さんに目を通して貰えるようにしますから、チェックをお願いします」
沼田の言葉に、ペンを走らせていた明子の手と、仕事の手順を組み立ていたフル回転の思考回路が、ピタリと止まる。
「なんか、一人で全部やりそうな勢いなんで。小杉さんがやったほうが、間違いなく早いのは判りますけど、小杉さんは他にも仕事を抱えているじゃないですか。本来は、これはウチでやらなきゃならない仕事ですから。あそこの仕事は、僕に出してください」
まっすぐに、自分を見つめる沼田に、明子は息を詰めた。
ふいに。
-一人で抱えるなよ。
牧野のあの声が、耳の奥に響いた。
「小杉さん?」
黙り込んだままの明子を訝しがる沼田の声に、明子は我に返った。
深呼吸、一つして、明子は苦笑いを浮かべる。
「そうでした。ごめんなさい」
「いえ。すいません。生意気言って」
「ううん。悪い癖、なんだよねえ」
「え?」
「私の、悪い癖なの。なんでも一人でやろうとしちゃうの。昔。新人だったころ。君島さんにも、よく怒られた」
「俺も最近、叱ったはずだけどな」
どこから話を聞いていたのか、明子の言葉に噛みつくようにそう言って、牧野が会議室に入ってきた。
明子をまっすぐに見て、沼田はそう告げた。
「水曜の朝までには、小杉さんに目を通して貰えるようにしますから、チェックをお願いします」
沼田の言葉に、ペンを走らせていた明子の手と、仕事の手順を組み立ていたフル回転の思考回路が、ピタリと止まる。
「なんか、一人で全部やりそうな勢いなんで。小杉さんがやったほうが、間違いなく早いのは判りますけど、小杉さんは他にも仕事を抱えているじゃないですか。本来は、これはウチでやらなきゃならない仕事ですから。あそこの仕事は、僕に出してください」
まっすぐに、自分を見つめる沼田に、明子は息を詰めた。
ふいに。
-一人で抱えるなよ。
牧野のあの声が、耳の奥に響いた。
「小杉さん?」
黙り込んだままの明子を訝しがる沼田の声に、明子は我に返った。
深呼吸、一つして、明子は苦笑いを浮かべる。
「そうでした。ごめんなさい」
「いえ。すいません。生意気言って」
「ううん。悪い癖、なんだよねえ」
「え?」
「私の、悪い癖なの。なんでも一人でやろうとしちゃうの。昔。新人だったころ。君島さんにも、よく怒られた」
「俺も最近、叱ったはずだけどな」
どこから話を聞いていたのか、明子の言葉に噛みつくようにそう言って、牧野が会議室に入ってきた。