リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
今日の成果と今後のスケジュールを、明子は牧野に手短に説明した。
明子の言葉に牧野は小さく頷き、木曜かと独り言のように呟いた。

「沼田くんが、すでにほぼ要求を吸い上げてくれていましたので、次回にはそれを元に調査報告書を先方に提出して、あるていどのご提案まで」
「間に合うのか?」
「合わせます。現システムの調査は、沼田くんが、ほぼ終わらせてくれていますし」
「営業のほうはどうなんだ? 総務だけってわけにはいかないだろ」
「あわせて、プレゼンはさせていただく予定です。沢木様に、次回は営業の方にも参加していただきたい旨は伝えてきました。調整してくださるとのことです」

牧野に淡々と報告をしている間、明子はずっとその腕を組んだまま、牧野を睨みつけていた。

沼田によって、すでに要求は吸い上げられていたことと、現システムの分析も進められていることを告げても、当然のような顔で聞いている牧野のその小憎らしい顔に、ギリギリと爪を立てて、これでもかというくらいのひっかき傷を作ってやりたい気分だった。


(どうしてくれよう、この男)


沸々と、明子のお腹の底で怒りのマグマが煮えたぎっていた。
牧野は明子のそんな苛立ちに気付いていながら、敢えて素知らぬ顔をしているようだった。
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