リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「小杉さん、男前だなあ」
松山ののんびりとした声が、場の空気を変えた。
その言葉に「松山さん、嫁入り前の娘に、男前はやめてくださいよ」と、明子は頬を膨らませた。
「それ褒め言葉ですか? というかですね。隣でお腹抱えて笑っているその人、目障りなんですけど?」
松山の隣で体を丸めて笑っている牧野を、なにを笑ってるんですかっと怒鳴りつけたいところだったが、部長の手前だ、乱心はよせと戒めるもう一人の自分が、それを押し留めていた。
「沼田」
静かに立ち上がった笹原が、太く穏やかな声で沼田の名を呼んだ。
沼田はかわいそうなくらい緊張した声で「はい」と答え、条件反射のように立ち上がった。
「いいプレゼンだった。安心して仕事を任せられると思える、いいプレゼンだった」
まっすぐに沼田を見てそう告げた笹原に、沼田は二度三度と息を飲むように喉を鳴らして、やがて口を開いた。
「ありがとうございましたっ」
がたがたに震えた裏返った声で、それでも沼田はそう言って、首にまで汗を滴り流している頭を下げた。
松山ののんびりとした声が、場の空気を変えた。
その言葉に「松山さん、嫁入り前の娘に、男前はやめてくださいよ」と、明子は頬を膨らませた。
「それ褒め言葉ですか? というかですね。隣でお腹抱えて笑っているその人、目障りなんですけど?」
松山の隣で体を丸めて笑っている牧野を、なにを笑ってるんですかっと怒鳴りつけたいところだったが、部長の手前だ、乱心はよせと戒めるもう一人の自分が、それを押し留めていた。
「沼田」
静かに立ち上がった笹原が、太く穏やかな声で沼田の名を呼んだ。
沼田はかわいそうなくらい緊張した声で「はい」と答え、条件反射のように立ち上がった。
「いいプレゼンだった。安心して仕事を任せられると思える、いいプレゼンだった」
まっすぐに沼田を見てそう告げた笹原に、沼田は二度三度と息を飲むように喉を鳴らして、やがて口を開いた。
「ありがとうございましたっ」
がたがたに震えた裏返った声で、それでも沼田はそう言って、首にまで汗を滴り流している頭を下げた。