リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
バックミラー越しに、後部座席に悠然と座っている林田を、明子はため息交じりに見た。
林田は、第一システム部から第三システム部、および技術部も含めて、システムの設計開発に携わる部門を全て統括している事業本部長だった。
年の頃は、五十を中ほどまで過ぎたくらいらしい。
【地獄を見てきた男】という評を明子が聞かされたのは、入社して間もない頃だった。
林田はその当時、第一システム部の部長だった。
それは林田にとって、二度目の部長職だったらしい。
林田が四十になったころ、第一システム部が関わっていた仕事で、地元の地方紙を賑わせてしまうシステムトラブルが発生した。
その責任を取って、その当時、第一システム部の部長だった林田は、一気に主任に降格されたらしい。
-もう、あの男も終わったな。
そんな哀れみと嘲りが入り混じった声が多い中、だが林田は腐ることなく大きな仕事を次々と成し遂げ、また部長に返り咲いたのだと、確か、君島からそう聞かされた気がする。
普段は温厚な顔で話をしているが、ひとたび逆鱗に触れると、微塵の躊躇も容赦も見せず、問答無用で人をばっさりと切り捨てるようなところが林田にはあった。
そんな人物を前にしてのプレゼンだと判っていたら、絶対にこんなことは引き受けなかったのにと、明子は牧野のにたりとした顔を思い出し、また怒りを募らせた。
林田は、第一システム部から第三システム部、および技術部も含めて、システムの設計開発に携わる部門を全て統括している事業本部長だった。
年の頃は、五十を中ほどまで過ぎたくらいらしい。
【地獄を見てきた男】という評を明子が聞かされたのは、入社して間もない頃だった。
林田はその当時、第一システム部の部長だった。
それは林田にとって、二度目の部長職だったらしい。
林田が四十になったころ、第一システム部が関わっていた仕事で、地元の地方紙を賑わせてしまうシステムトラブルが発生した。
その責任を取って、その当時、第一システム部の部長だった林田は、一気に主任に降格されたらしい。
-もう、あの男も終わったな。
そんな哀れみと嘲りが入り混じった声が多い中、だが林田は腐ることなく大きな仕事を次々と成し遂げ、また部長に返り咲いたのだと、確か、君島からそう聞かされた気がする。
普段は温厚な顔で話をしているが、ひとたび逆鱗に触れると、微塵の躊躇も容赦も見せず、問答無用で人をばっさりと切り捨てるようなところが林田にはあった。
そんな人物を前にしてのプレゼンだと判っていたら、絶対にこんなことは引き受けなかったのにと、明子は牧野のにたりとした顔を思い出し、また怒りを募らせた。