リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
5.ざわめき揺れる、想い
「小杉主任ー。助けてくださーい」
帰社の挨拶も終わらないうちに、木村がそう言って明子に泣きついてきた。
「どうしたの?」
「赤木さんがー」
「が?」
「判りませーん」
思わず、膝からガクッと崩れるようにコケてしまいそうになるのを、明子は堪えた。
(いや、あのね、判らないって訴えられてもね)
(なに?)
自分の留守中にいったいなにがあったのかと、今日は在籍していたはずの小林に目を向けるが、明子の視線を受けた小林も、よく判らんというように首を振るだけだった。
「木村くん。判るように、説明してくれる?」
「毎日、電話がくるんです。今日も、昨日も、一昨日も」
「一昨日は、マウスがちゃんと刺さってなくて、認識してなかったってやつでしょ」
確か、一時間近く、木村は赤木と電話で押し問答をしていたような光景を見た覚えが、明子にはあった。
電話を切るなりぐったりしている木村の様子に、仕方がないと明子は苦笑して、とっておきの秘蔵のチョコレートを分けてやった。
マウスの件は解決したんでしょうと確認する明子に、木村はこくこくこくと、大きく何度も首を縦に振った。
帰社の挨拶も終わらないうちに、木村がそう言って明子に泣きついてきた。
「どうしたの?」
「赤木さんがー」
「が?」
「判りませーん」
思わず、膝からガクッと崩れるようにコケてしまいそうになるのを、明子は堪えた。
(いや、あのね、判らないって訴えられてもね)
(なに?)
自分の留守中にいったいなにがあったのかと、今日は在籍していたはずの小林に目を向けるが、明子の視線を受けた小林も、よく判らんというように首を振るだけだった。
「木村くん。判るように、説明してくれる?」
「毎日、電話がくるんです。今日も、昨日も、一昨日も」
「一昨日は、マウスがちゃんと刺さってなくて、認識してなかったってやつでしょ」
確か、一時間近く、木村は赤木と電話で押し問答をしていたような光景を見た覚えが、明子にはあった。
電話を切るなりぐったりしている木村の様子に、仕方がないと明子は苦笑して、とっておきの秘蔵のチョコレートを分けてやった。
マウスの件は解決したんでしょうと確認する明子に、木村はこくこくこくと、大きく何度も首を縦に振った。