リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「牧野さんがいるから、ウチにきたってことは、沼田くんから聞いていたんですけど、やっとその意味が判りましたよ」
「沼田から?」
小林が意外だなと言う顔で明子を見た。
随分と懐いたもんだなという独り言のような呟きに、明子は苦笑いを浮かべ、そう言えばと思い出した。
(牧野さんも、驚いていたっけ。沼田くんがよく喋るって言ったら)
そんなに驚くことなのかしらと思いつつ、明子は小林をたしなめた。
「懐いたって、犬じゃないんですから」
「そっか? なんか、手足の長いインテリ風な顔立ちの大人しい大型犬っぽいだろ、あれ」
「その例えは、絶妙に素晴らしいですと認めます」
小林のその表現に、明子はくすくすと笑った。
「けっこう、いろいろ話してくれますよ」
「俺は、あんまり喋ったことないな。君島のところにずっといるけどな、あいつと喋るようになったのも、ここ、一年、二年じゃないのかなあ」
「そうなんですか? まあ、今週はずっと一緒に仕事でしたし。先週から、私、お弁当なんで昼休みも一緒で。話をする機会が必然的に多くなったからかもしれませんね。来月の忘年会も足がないようなら乗せてきますよって、声かけてくれましたよ」
「……、へえ」
一呼吸分、なにか考えるように無言になった小林は、沼田がねえ、ふうんと、小さな頷きを繰り返した。
「乗って、いくのか?」
「いえ。牧野さんが乗ってけって」
走らせていたペンの動きをぴたりと止めて、なにか考え込むように一点を見つめた小林は、ややあってから、にやりという笑みを浮かべた顔でふうんと頷き「やっぱり、そういうことなんじゃねえか」とまた呟いた。
「沼田から?」
小林が意外だなと言う顔で明子を見た。
随分と懐いたもんだなという独り言のような呟きに、明子は苦笑いを浮かべ、そう言えばと思い出した。
(牧野さんも、驚いていたっけ。沼田くんがよく喋るって言ったら)
そんなに驚くことなのかしらと思いつつ、明子は小林をたしなめた。
「懐いたって、犬じゃないんですから」
「そっか? なんか、手足の長いインテリ風な顔立ちの大人しい大型犬っぽいだろ、あれ」
「その例えは、絶妙に素晴らしいですと認めます」
小林のその表現に、明子はくすくすと笑った。
「けっこう、いろいろ話してくれますよ」
「俺は、あんまり喋ったことないな。君島のところにずっといるけどな、あいつと喋るようになったのも、ここ、一年、二年じゃないのかなあ」
「そうなんですか? まあ、今週はずっと一緒に仕事でしたし。先週から、私、お弁当なんで昼休みも一緒で。話をする機会が必然的に多くなったからかもしれませんね。来月の忘年会も足がないようなら乗せてきますよって、声かけてくれましたよ」
「……、へえ」
一呼吸分、なにか考えるように無言になった小林は、沼田がねえ、ふうんと、小さな頷きを繰り返した。
「乗って、いくのか?」
「いえ。牧野さんが乗ってけって」
走らせていたペンの動きをぴたりと止めて、なにか考え込むように一点を見つめた小林は、ややあってから、にやりという笑みを浮かべた顔でふうんと頷き「やっぱり、そういうことなんじゃねえか」とまた呟いた。