リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「私、また、あの腹黒課長の妙な企みに巻き込まれてたりします?」
「さあな。それは俺にも判らんわ。一応、補足説明しといたる。助手席乗せる女性は、家族か彼女限定な、牧野の車は」
「へえ……ぇ、ええーっ」

なんですか、その徹底ぶりと仰け反る明子に、驚くのはそこじゃねえだろっと小林が突っ込んだ。

「そんな男に、会社の行事でみんなが集まる場所まで、俺の車に乗っていけと言われたんだよ、お前さん」

ご理解頂けましたかねと、やや呆れ混じりに言う小林に、明子はまた目をしばしばさせ、少しばつの悪い顔をしながら、ご理解って言われてもと、もぞもぞと言い募った。

「そんな話、今、初めて聞きましたし」
「つき合ってんじゃないのか? 俺は今の車の話でそう判断したぞ?」
「誰と誰がです? 牧野さんと私がですか?」

ないですよ、そんなことと、手を大きく何度も振って、ないないないですと、疲れたような乾いた声で笑う明子に、小林のほうがなんだかなあと頭を抱えた。
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