リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「な。ホントのこと言えよ? それならそうだってはっきりさせて、あのうざったいヒメを追い払って欲しいくらいなんだし、まだ隠しときたいっていうなら、いくらでも協力するからよ」
「だから、付き合ってなんていませんよ」
「ホントか?」
「ホントです。彼女限定なんて話、初めて聞いて驚いてるのに」
「けっこう、有名な話だぞ?」
「でも、初めて聞いたんです。知っていたら、乗っていくなんて言いませんよ」
「だから、やっとそうなったのかって」
「なんですか、そのやっとって。多分、牧野さんもそんな意識はないですよ。仕事仲間を運んでいくってくらいのことですよ。昔から、私のこと、女だなんて思っていませんもの、牧野さん」
「そんなことねえだろ」
「あるんです。私は、」
ひとつ、息を吸い込んで、吐き出す息で明子は告げた。
「……女だなんて思われていません」
少しだけ、陰りのあるような声で、それでもきっぱりとそう答えた明子は、またディスプレイを見つめ、チェック作業を続けた。
けれど、眺めているそれを理解することが出来ない。
頭の中が、真っ白だった。
牧野の真意が判らなかった。
乗っていけと言ってくれたとき、本当は嬉しかったのに。
少しだけでも、気に掛けてもらえたことが、嬉しかったのに。
今は、悲しくて、悔しい。
(なんで、こんな思い、させるの?)
(火の粉を払う盾にするのに、ちょうどいいやって?)
じわりと、見つめる文字が滲み出し、明子は大きく息を吸い込んだ。
泣くのはイヤと、涙を堪える呪文を唱える。
「だから、付き合ってなんていませんよ」
「ホントか?」
「ホントです。彼女限定なんて話、初めて聞いて驚いてるのに」
「けっこう、有名な話だぞ?」
「でも、初めて聞いたんです。知っていたら、乗っていくなんて言いませんよ」
「だから、やっとそうなったのかって」
「なんですか、そのやっとって。多分、牧野さんもそんな意識はないですよ。仕事仲間を運んでいくってくらいのことですよ。昔から、私のこと、女だなんて思っていませんもの、牧野さん」
「そんなことねえだろ」
「あるんです。私は、」
ひとつ、息を吸い込んで、吐き出す息で明子は告げた。
「……女だなんて思われていません」
少しだけ、陰りのあるような声で、それでもきっぱりとそう答えた明子は、またディスプレイを見つめ、チェック作業を続けた。
けれど、眺めているそれを理解することが出来ない。
頭の中が、真っ白だった。
牧野の真意が判らなかった。
乗っていけと言ってくれたとき、本当は嬉しかったのに。
少しだけでも、気に掛けてもらえたことが、嬉しかったのに。
今は、悲しくて、悔しい。
(なんで、こんな思い、させるの?)
(火の粉を払う盾にするのに、ちょうどいいやって?)
じわりと、見つめる文字が滲み出し、明子は大きく息を吸い込んだ。
泣くのはイヤと、涙を堪える呪文を唱える。