リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
無言のまま、そんな明子を数秒見つめた小林は、二度、三度と髪をガシガシとかき乱し、そっかと呟いた。

「悪い。ちょっとしつこかったな。よくよく考えれば、彼女云々って話も、本人から聞いたわけじゃねえしな。誰かが言い出した牧野伝説かもな」

いろいろ伝説あるからな、あれ。
少しおどけた声で言う小林に、明子も強張っていた頬を緩めた。

「そうですね」

良くも悪くも目立つ人だから、いろいろ噂も耐えませんしねと、明子も揶揄するような言葉を続ける。

「でも、なんか、いろいろ面倒そう。沼田くんに乗せてって貰おうかなあ」

面倒はイヤというようにそうぼやく明子に、小林はそれもそれで面倒そうだからやめとけと、明子を止めた。
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