リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】

6.心が迷子になった夜

いつもより、遅めの起床でいいはずの土曜の朝だったけれど、いつも通りの時刻に明子は起きた。
目覚めたのは、ベットではなく、ソファーの上だったけれど。
昨夜、いつ眠ったのかも、明子は覚えていなかった。

顔を洗い鏡を見ると、少しだけ、上瞼が腫れているようだった。
何度も、何度も、水を叩きつけるようにして、顔を洗う。


(しっかりしなって、もう)
(こんな顔で、会社に行くわけいかないでしょ)
(あんぽんたんメ)


スイッチを入れ直さなきゃと、明子は手をぐぅっと頭上に伸ばし、体中に新鮮な空気を吸い込んで、思い切り吐き出した。
昨夜から、体に巣食っていた熱を全て吐き出すように、何度も深呼吸を繰り返す。

身支度を整えながら、お弁当、どうしようかなと、敢えて日常的なことを考えた。

昨夜の電話では詳しい話がなかったので、会社に出てみないことには予定がはっきりとは判らない。
けれど、時間をきっちりと決められての出社ではないことを考えると、緊急時に備えての会社待機のようなものかなと、明子は考えた。
多分、客先に行くというよりは、社内から電話などでのサポートだろうと当たりをつけて、ならば、昼も極力社内にいたほうがよさそうだと結論付けた。


(一人で、待機かもしれないしね)
(そうしよう)


そうと決まれば、ちゃっちゃと用意してしまおうと、明子は献立を組み立てながら身支度を整えた。
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