リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
土曜の朝は、駅へと向かう道は、いつもより閑散としていた。
平日ならばすれ違うであろうなじみの顔もほとんど見かけず、車の通りも少なかった。
青空が広がり、布団を干して部屋を掃除したら、のんびり昼寝をしたかったかもと、そんなだらけたことを考えながら、明子は駅へと急いだ。
高いヒールのない、紺色のフラットなバレエシューズタイプの靴を履き、明子は元気に歩いた。
駅まで歩いて二十分とは掛からない距離とは言え、高いヒールのある靴で、カツカツと歩いていくのは、正直、楽ではなかった。
特に昨日は、いっそこんなヒールは叩き折ってしまうかしらと、ホンの一瞬とは言え、そんな不穏なことを脳裏に過ぎらせるほど、辛かった。
(ホントに、甘やかしすぎたわね。この足)
(昔の足に戻さなきゃ)
新人のころは、毎日、気張ってヒールの高い靴を履いていたのにと、いつの間にかだらけてしまった体に、明子は今更ながらに少しばかりの後悔を覚えた。
(でも、今日は土曜だしね)
(週末くらいは、このクーダラさんな足に、楽にさせてあげないとね)
そうして選んだ靴は、最初、踵のなさがむしろ違和感になるほど、楽だった。
(ぺったんこの靴は、楽ちんだなあ)
(ずんずん歩けるわ)
この足取りの軽さは、きっと、靴のおかげ。
気持ちが弾むのは、きっと、晴れやかな青空のおかげ。
明子は、そう思うことにした。
平日ならばすれ違うであろうなじみの顔もほとんど見かけず、車の通りも少なかった。
青空が広がり、布団を干して部屋を掃除したら、のんびり昼寝をしたかったかもと、そんなだらけたことを考えながら、明子は駅へと急いだ。
高いヒールのない、紺色のフラットなバレエシューズタイプの靴を履き、明子は元気に歩いた。
駅まで歩いて二十分とは掛からない距離とは言え、高いヒールのある靴で、カツカツと歩いていくのは、正直、楽ではなかった。
特に昨日は、いっそこんなヒールは叩き折ってしまうかしらと、ホンの一瞬とは言え、そんな不穏なことを脳裏に過ぎらせるほど、辛かった。
(ホントに、甘やかしすぎたわね。この足)
(昔の足に戻さなきゃ)
新人のころは、毎日、気張ってヒールの高い靴を履いていたのにと、いつの間にかだらけてしまった体に、明子は今更ながらに少しばかりの後悔を覚えた。
(でも、今日は土曜だしね)
(週末くらいは、このクーダラさんな足に、楽にさせてあげないとね)
そうして選んだ靴は、最初、踵のなさがむしろ違和感になるほど、楽だった。
(ぺったんこの靴は、楽ちんだなあ)
(ずんずん歩けるわ)
この足取りの軽さは、きっと、靴のおかげ。
気持ちが弾むのは、きっと、晴れやかな青空のおかげ。
明子は、そう思うことにした。