リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
営業部は制服が支給されていたこともあり、通勤用の服装は、それほど気を使う必要はなかった。
あまりにも露出が激しい格好や、あまりにもだらしない服装で出社して、上司や先輩に見つかると、そこそこ厳しく注意をされたけれど、ややくたびれ感のあるデニムなどを履いていっても、問題はなかった。

支援部やシステム部は、基本、社内でも私服の部署だった。
きっちりとしたスーツの着用を義務付けられている訳ではないけれど、急に客先に行くことになっても恥かしくない服装であることが、暗黙の了解になっていた。
その流れで、なんとなく、デニムの着用も、皆、控えているようだった。
部課長クラスになると、ほとんどがスーツを着用している。

けれど、休日出勤のときは、例外的にラフな服装が許されていた。
それゆえに、ジャージ姿で出てくるような者さえいた。

それでも、そんなときでさえ、牧野はジャケットを着用し、清潔感のあるきちんと感がある服装だった。
昔から、牧野はそうだったような気がする。
だらしない格好だと仕事をしている気分ならないと、そう言っていたような気がする。
だから、先日の私服姿は、明子には目新しかった。

思いがけず、若々しい雰囲気の服装だった牧野を思い出した明子は、知らず、頬を緩めていた。
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