リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
いつもより、一つ遅い電車に、明子は乗り込んだ。
スーツ姿のサラリーマンの姿もちらほらとはあったけれど、土曜の電車の中は平日の通勤ラッシュの混雑がウソのような静けさだった。
立っている者などいない車両だったけれど、明子はドアに寄りかかるように立っていた。
牧野に出社することを伝えたほうがよいのだろうかと悩みながら、明子は携帯電話を眺めた。
昨夜のメッセージは、出勤を強制するようなものではなかった。
時間があれば手伝って欲しいという、牧野にしては珍しく、低姿勢なお願いだった。
だからこそ、きっと牧野は待っている。
そんな予感があった。
来ると信じて待っている。
そんな予感があった。
(まあ。行けばいいことだしね)
アドレス帳から、牧野の名前を見つける途中でそう思い直し、明子は携帯電話を閉じた。
伝言があることを伝えるアイコンが表示されていたけれど、それは、そのまま放置した。
気付いていない振りをして、放置した。
緊急の用事なら、何度でも、繰り返し掛けて来る。そう言う母親だった。
おそらく、それほど大した話ではないのだろうと、明子は自分に言い聞かせた。
(また、ケンカになるような、そんな話だろうしね)
うんざりしたようなため息を吐き、明子は窓の外の青空を眺めた。
電車が、静かに、いつもより人影の少ない駅に着いた。
スーツ姿のサラリーマンの姿もちらほらとはあったけれど、土曜の電車の中は平日の通勤ラッシュの混雑がウソのような静けさだった。
立っている者などいない車両だったけれど、明子はドアに寄りかかるように立っていた。
牧野に出社することを伝えたほうがよいのだろうかと悩みながら、明子は携帯電話を眺めた。
昨夜のメッセージは、出勤を強制するようなものではなかった。
時間があれば手伝って欲しいという、牧野にしては珍しく、低姿勢なお願いだった。
だからこそ、きっと牧野は待っている。
そんな予感があった。
来ると信じて待っている。
そんな予感があった。
(まあ。行けばいいことだしね)
アドレス帳から、牧野の名前を見つける途中でそう思い直し、明子は携帯電話を閉じた。
伝言があることを伝えるアイコンが表示されていたけれど、それは、そのまま放置した。
気付いていない振りをして、放置した。
緊急の用事なら、何度でも、繰り返し掛けて来る。そう言う母親だった。
おそらく、それほど大した話ではないのだろうと、明子は自分に言い聞かせた。
(また、ケンカになるような、そんな話だろうしね)
うんざりしたようなため息を吐き、明子は窓の外の青空を眺めた。
電車が、静かに、いつもより人影の少ない駅に着いた。