リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ただ、ウチとしては、とにかくデータをどうにかしねえと、確認作業にも入れないからな。文句を言っていても仕方がねえから、昨日の夕方から移行用の元データを作るためのプログラムを作り始めて、今朝やっと、元データが揃って、そこからやっと、ウチのデータベースに移行が始まったんだ。でも、エラーが出るかもしれねえから、みんな、帰らないでまだ張り付いててな」
「差し入れ持って、陣中見舞いにでも行ってきましょうか」
「部長が顔を出すとさ。向こうさんも含めて、金の話をする相談をしなきゃならねえからな」
「まあ。そうですね」
「で。手伝ってもらいたいのが」
「昨日、急遽作ったプログラムから、仕様を起こせと」
「おう。その通り。一応、コード変換の表やらなにやらは、ここに手書きであるんだけどな。書いた俺がなにを書いたのか、今はもう、さっぱり読めん」
ひらひらと、手書きの紙を翳して、牧野は自分で自分に呆れたように、がくりと肩を落とした。
明子も、仕方がないなあと笑うしかなかった。
「ここから見ても、ひどい字だということだけは、はっきりと判ります、それは」
「だーから。プログラムのほうから、仕様を起こしてくれって言ってんだよ。とりあえず、今日明日で移行できたら、月曜から動作確認の作業に入る予定なんだけどな。多分、ここの金額が合わないだの、マスターが引っ張ってこれねえだの。いろいろ出るだろうから」
「元データを作り直すとしたら、仕様がないと手間ですね。サーバーにあるんですか」
「ここに入ってるやつを、頼む」
メモリースティクを差し出され、明子はそれを受け取ると、自分のパソコンに刺した。
確認すると、そこそこの数のプログラムソースが入っていた。
「向こうさんのテーブルレイアウトも入ってるだろ?」
「あります」
「一応、判りづらい項目には、備考欄に補足説明を足しておいたつもりなんだけどな。なんで、この項目がここにセットされているんだか、判らないものがあったら、聞いてくれ」
牧野の言葉を聞きながら、明子は最初の一本を開いて、スクロールさせながらソースを眺めていく。
「ソースのほうにも、ある程度はコメントを入れておいたほうが、いいですよね?」
「頼む。みんな、もういっぱいいっぱいで、コメントをがっつりと入れる気力も、なかったかもしれねえ」
クロワッサンを頬張りながらの牧野の言葉に、明子はぐぅっと手を上に伸ばして、背筋をめきめきと伸ばし、自分に気合を入れる。
(よし。やるぞ)
明子がキーボードを連打する音が、部屋中に響いた。
牧野は目を細めて、そんな明子を見ていた。
「差し入れ持って、陣中見舞いにでも行ってきましょうか」
「部長が顔を出すとさ。向こうさんも含めて、金の話をする相談をしなきゃならねえからな」
「まあ。そうですね」
「で。手伝ってもらいたいのが」
「昨日、急遽作ったプログラムから、仕様を起こせと」
「おう。その通り。一応、コード変換の表やらなにやらは、ここに手書きであるんだけどな。書いた俺がなにを書いたのか、今はもう、さっぱり読めん」
ひらひらと、手書きの紙を翳して、牧野は自分で自分に呆れたように、がくりと肩を落とした。
明子も、仕方がないなあと笑うしかなかった。
「ここから見ても、ひどい字だということだけは、はっきりと判ります、それは」
「だーから。プログラムのほうから、仕様を起こしてくれって言ってんだよ。とりあえず、今日明日で移行できたら、月曜から動作確認の作業に入る予定なんだけどな。多分、ここの金額が合わないだの、マスターが引っ張ってこれねえだの。いろいろ出るだろうから」
「元データを作り直すとしたら、仕様がないと手間ですね。サーバーにあるんですか」
「ここに入ってるやつを、頼む」
メモリースティクを差し出され、明子はそれを受け取ると、自分のパソコンに刺した。
確認すると、そこそこの数のプログラムソースが入っていた。
「向こうさんのテーブルレイアウトも入ってるだろ?」
「あります」
「一応、判りづらい項目には、備考欄に補足説明を足しておいたつもりなんだけどな。なんで、この項目がここにセットされているんだか、判らないものがあったら、聞いてくれ」
牧野の言葉を聞きながら、明子は最初の一本を開いて、スクロールさせながらソースを眺めていく。
「ソースのほうにも、ある程度はコメントを入れておいたほうが、いいですよね?」
「頼む。みんな、もういっぱいいっぱいで、コメントをがっつりと入れる気力も、なかったかもしれねえ」
クロワッサンを頬張りながらの牧野の言葉に、明子はぐぅっと手を上に伸ばして、背筋をめきめきと伸ばし、自分に気合を入れる。
(よし。やるぞ)
明子がキーボードを連打する音が、部屋中に響いた。
牧野は目を細めて、そんな明子を見ていた。