リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「同期で、以前は同じ部署にいたと話したら、実は俺の部下と結婚するってことで仲人を引き受けたんだが、どんな人だって聞かれてな、明るくて、まじめな女性だって答えたよ」
「……ホント、世間狭すぎ」
震える声で、それでも笑おうと、明子は無理づくで笑顔を作った。
「な。それから一ヶ月も経たないころ。また、お前のこと聞かれてな。変わった様子はないかって。なんかな、持って回った言い方するから、なんだろうと思ってな。変わった様子って言われても、毎日顔を合わせてるわけじゃないから判らない、なにかあったのかと聞いたんだ」
「婚約、御破算になりましたって?」
天井を見上げ、こみ上げてくる熱いものを明子は懸命に堪えた。
背後では、店主たちが少し前にやってきた常連らしき客と笑いながら話をしていた。
楽しげなその声を、聞くともなしに、明子は聞いていた。
「仕事、できるか?」
世界が、ぐらりと揺れる。
凍りついた心が、音を立てて割れていくようだった。
牧野の言葉が、
遠い。
「……ホント、世間狭すぎ」
震える声で、それでも笑おうと、明子は無理づくで笑顔を作った。
「な。それから一ヶ月も経たないころ。また、お前のこと聞かれてな。変わった様子はないかって。なんかな、持って回った言い方するから、なんだろうと思ってな。変わった様子って言われても、毎日顔を合わせてるわけじゃないから判らない、なにかあったのかと聞いたんだ」
「婚約、御破算になりましたって?」
天井を見上げ、こみ上げてくる熱いものを明子は懸命に堪えた。
背後では、店主たちが少し前にやってきた常連らしき客と笑いながら話をしていた。
楽しげなその声を、聞くともなしに、明子は聞いていた。
「仕事、できるか?」
世界が、ぐらりと揺れる。
凍りついた心が、音を立てて割れていくようだった。
牧野の言葉が、
遠い。