リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
野菜を洗いながら、よくよく考えればと、明子は昔の自分を思い返してみた。
花嫁修業の名目で料理教室に通っていたけれど、そんな名目がなくても通ってみたいと密かに思っていたくらい、自分は料理を作ることが好きだったのだ。
食べたことはあっても、作ったことはない料理を教えてもらえると、それが楽しくて嬉しくて、レシピを見なくても作れるようになるまで、何度も作った。
長いこと、かつてのそんな自分のことを、明子は忘れていた。
いや、思い出したくなくて、記憶の奥底に封印していた。
けれど……。
(あたし、この時間が、やっぱり好きなんだわ)
料理を作ることが、作るためのこの時間がなによりも好きだった自分を、明子は思い出した。
おいしい匂いで溢れるキッチンにいる時間は、明子にとって、子どものころから至福の時だった。
嫌なことも。
辛いことも。
泣きたくなることも。
キッチンに立って料理を作り始めると、明子はキレイに忘れることができた。
おいしいご飯を食べれば、前を向く力が自然と沸いてきた。
(そうだよね)
(寂しいも)
(悲しいも)
(この時間の中で、すべて)
乗り越えてきたんだわと、明子はしみじみとそう思った。
花嫁修業の名目で料理教室に通っていたけれど、そんな名目がなくても通ってみたいと密かに思っていたくらい、自分は料理を作ることが好きだったのだ。
食べたことはあっても、作ったことはない料理を教えてもらえると、それが楽しくて嬉しくて、レシピを見なくても作れるようになるまで、何度も作った。
長いこと、かつてのそんな自分のことを、明子は忘れていた。
いや、思い出したくなくて、記憶の奥底に封印していた。
けれど……。
(あたし、この時間が、やっぱり好きなんだわ)
料理を作ることが、作るためのこの時間がなによりも好きだった自分を、明子は思い出した。
おいしい匂いで溢れるキッチンにいる時間は、明子にとって、子どものころから至福の時だった。
嫌なことも。
辛いことも。
泣きたくなることも。
キッチンに立って料理を作り始めると、明子はキレイに忘れることができた。
おいしいご飯を食べれば、前を向く力が自然と沸いてきた。
(そうだよね)
(寂しいも)
(悲しいも)
(この時間の中で、すべて)
乗り越えてきたんだわと、明子はしみじみとそう思った。