リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
バックの中から、携帯電話の着信音が聞こえた。
走っている間も。
最初のうちは、ずっと牧野からの着信だと判る音が聞こえていたけれど、途中からその音も止んだ。
聞こえてきたのは、家族からの電話だと知らせる着信音だった。
(そう言えば、朝も、電話があったっけ)
鼻を啜り鳴らしながら、そんなことを考えて、それでも、鳴り続けている携帯電話はそのまま放置した。
音が、ぱたりと止まる。
諦めたのだろうと明子は思った。
けれど、一分とたたないうちに、また携帯電話が鳴った。
留守電に切り替わっては切れ、少しの間を空けてはまた鳴り出す。
そんなことが三回、四回と続くと、さすがに何かあったのかもしれないと、明子も幾許かの不安を覚えた。
仕方なく、電話に出た。
『明子? なんで、電話に出ないのよ』
「ごめん。お風呂、入っていたから」
泣き声だということに気付かれてしまったかと思ったが、母は何も気付いていない様子で喋り続けた。
『朝も電話したのよ』
「仕事中だったから」
『あんな朝から仕事だったの?』
「なんの用? 疲れてるの」
やっぱり出るんじゃなかったと、明子はすでに後悔し始めていた。
こんな話をしていられるくらいなら、やはり大した用ではなかったのだ。
なにかあったのかもと心配した自分が、滑稽だった。
走っている間も。
最初のうちは、ずっと牧野からの着信だと判る音が聞こえていたけれど、途中からその音も止んだ。
聞こえてきたのは、家族からの電話だと知らせる着信音だった。
(そう言えば、朝も、電話があったっけ)
鼻を啜り鳴らしながら、そんなことを考えて、それでも、鳴り続けている携帯電話はそのまま放置した。
音が、ぱたりと止まる。
諦めたのだろうと明子は思った。
けれど、一分とたたないうちに、また携帯電話が鳴った。
留守電に切り替わっては切れ、少しの間を空けてはまた鳴り出す。
そんなことが三回、四回と続くと、さすがに何かあったのかもしれないと、明子も幾許かの不安を覚えた。
仕方なく、電話に出た。
『明子? なんで、電話に出ないのよ』
「ごめん。お風呂、入っていたから」
泣き声だということに気付かれてしまったかと思ったが、母は何も気付いていない様子で喋り続けた。
『朝も電話したのよ』
「仕事中だったから」
『あんな朝から仕事だったの?』
「なんの用? 疲れてるの」
やっぱり出るんじゃなかったと、明子はすでに後悔し始めていた。
こんな話をしていられるくらいなら、やはり大した用ではなかったのだ。
なにかあったのかもと心配した自分が、滑稽だった。