リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
『なにって。メッセージ入れたでしょ』
「ゴメン。まだ聞いてない」
『あなたって子は、どうしてそう』
「ねえ。なんの用なの? まだ、お風呂が途中なの。体冷えてきちゃうから。用があるなら、さっさと話して」

止まらない涙を溢れさせたまま、泣き声で話していることにも気付いてくれない母に、明子は苛立っていく。


(いつも、この人はこうだ)


そう思うと、ますます、涙が溢れてきた。


電話の向こうで、母がため息を吐くのが判った。
それを聞いて、いっそこのまま電話を切ってしまおうかと、そんな衝動に駆られる。

『来週のお見合い。忘れてないわよね』

その言葉に、頭に血が上っていくのが明子にも判った。


(そんなものはしないと、何度も言っているに)
(どうして、嫌がることばかりするの)
(少しは、私の言葉を聞いてよ)


涙が止まらなくなった。

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