リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
7.その一歩を踏み出す力
最悪の朝を、明子は迎えた。
母親からの電話を切ったあと、濡れて冷え切った体を温めようと温かな湯を張った風呂に入ったものの、体の芯はずっと冷え切ったまま、温まることはなかった。
窓の外は明るい。
昨夜の雨は、上がっているようだった。
明子の意識は、朝の穏やかな時間を緩やかに人が行きかうような、そんな気配を感じ取っていた。
頭が妙に重い。
耐えられないような痛みではないけれど、頭の芯に鈍い痛みが居座っているようだった。
喉の奥にも、いやなざらつき感とひりつき感があった。
(風邪、ひいたかなあ)
そんなことを明子はぼんやりと考えて、額に手を当てた。
それが、記憶を呼び覚ます。
額に触れたあの手の温もりまでも蘇り、明子はまた泣き出しそうになった。
泣いて泣いて、忘れると、諦めると決めたのに、こんなことにですら思い出が記憶の底から蘇ってくる。
目を大きく開けるのに、苦労した。
触らなくても、瞼が重いと感じるくらい腫れていることは、明子にも判った。
時間を確かめようと、傍らにある携帯電話を見て、電源が入っていないことに気付いた。
(そういえば……)
(切って、しまったんだっけ)
頭の片隅で、昨夜のことを思い返してそんなことを考えながら、無意識のうちに、明子は携帯電話の電源を入れていた。
表示された時刻を確認すると、八時を少し過ぎたくらいだった。
母親からの電話を切ったあと、濡れて冷え切った体を温めようと温かな湯を張った風呂に入ったものの、体の芯はずっと冷え切ったまま、温まることはなかった。
窓の外は明るい。
昨夜の雨は、上がっているようだった。
明子の意識は、朝の穏やかな時間を緩やかに人が行きかうような、そんな気配を感じ取っていた。
頭が妙に重い。
耐えられないような痛みではないけれど、頭の芯に鈍い痛みが居座っているようだった。
喉の奥にも、いやなざらつき感とひりつき感があった。
(風邪、ひいたかなあ)
そんなことを明子はぼんやりと考えて、額に手を当てた。
それが、記憶を呼び覚ます。
額に触れたあの手の温もりまでも蘇り、明子はまた泣き出しそうになった。
泣いて泣いて、忘れると、諦めると決めたのに、こんなことにですら思い出が記憶の底から蘇ってくる。
目を大きく開けるのに、苦労した。
触らなくても、瞼が重いと感じるくらい腫れていることは、明子にも判った。
時間を確かめようと、傍らにある携帯電話を見て、電源が入っていないことに気付いた。
(そういえば……)
(切って、しまったんだっけ)
頭の片隅で、昨夜のことを思い返してそんなことを考えながら、無意識のうちに、明子は携帯電話の電源を入れていた。
表示された時刻を確認すると、八時を少し過ぎたくらいだった。