リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
煮込んでいる間に、すぐには使わない野菜を冷凍保存する準備をした。

大根の残った半分は、いちょう切りと短冊切りにして少量ずつ分ける。
キャベツは今日と明日使う分はそのままで、残った分は芯ごとざっくり切って。
四本入っていた人参は、二本はそのまま残して、残りは短冊切りにして、これも少量ずつ小分けにする。
しいたけ、しめじ、まいたけ、えのきといったのキノコ類は、しめじは半分はそのまま残して、残りは食べやすいサイズに切って、同じように食べやすい大きさに切ったしいたけ、まいたけと合わせて、ミックスきのこ風にしてから小分けにする。
えのきは一束はそのまま残して、もう一束はいしづきをギリギリのところで切り落としてから小分けにした。

そんなこんなの処理をした野菜を、冷凍庫に入れた。
こうしておくと、三週間くらいは持つらしい。
どこで仕入れた智恵だったか忘れたけど、なにかに書いてあったそれを思い出した。


(そうそう、前はこうやって、野菜を保存していたんだよね)
(野菜不足にならないようにって)
(いつでも、野菜が食べられるようにって)
(覚えてたなあ)
(エライ!)
(あたし!)


なんてことをやっていたら、すでに外は真っ暗だった。


(うぎゃーっ)
(洗濯物~っ)


一つのことに集中すると他を忘れる。
これも子どものころから変わらない、明子の長所であり短所でもあった。

急いで冷え切った洗濯物を取り込んで、畳みながら夕飯のことを考えた。


(なに、食べようかな~)
(やっぱり、温かいものがいいかなあ)


冷えきった洗濯物に対する反省など、明子の中から、すでにきれいになくなっていた。
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