リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
渋る者を、こんなに何度も誘ってくること自体、普段の牧野ならあり得ない。
探るような目で自分を見ている明子の目に、牧野はふふんと笑いながら、楽しそうに告げる。
「それは行ってのお楽しみー」
「楽しいんですか? それ、ホントに楽しいですか?」
ちょっと、かなり疑わしいですけどと言い、明子は腕を組んで、少しだけ上目遣いで牧野を睨む。
牧野は「楽しい楽しい」と、そんな明子を茶化した。
「ひっくり返りそうなくらい、楽しいぞ」
「仕事の話なら、会社でしてくださいよ」
牧野のその言いように、仕事の話に違いないと決め込んだ明子は「いやですよ、行きませんよ」と、頬を膨らませる。
「仕事の話じゃねえよ」
「じゃ、なんです? もう、これ以上、妙なことに巻き込まれたくないんですけど」
「それは行ってのお楽しみ」
「やめようかー。行きたくないかもー」
いやだなー。やだやだー。
勿体ぶって話そうとしない牧野に焦れて、明子は駄々を捏ねるように、そんなことを言い出してみた。
「行くって言ったろ」
「拒否る権利を行使します」
「却下。そんな権利は強奪する」
「横暴だー。労働者の権利をー」
「労使交渉じゃねえっつうの。仕事の話じゃねえから、警戒すんなよ」
そこまで言ってもまだ胡散臭そうに牧野を見ている明子の目に、お前なあと牧野は肩を落とす。
「そこまで疑うなって」
「だって。そういうときの牧野さんは、絶対、なんか良からぬことを企んでるときですもん。不安なんです」
「企んでなんか、いねーっていうの。ちょっとな。渡したいものがあるんだよ」
「渡したいもの?」
なんですかと眉を寄せて首を傾げる明子に、牧野は内緒だと口をへの字に曲げる。
探るような目で自分を見ている明子の目に、牧野はふふんと笑いながら、楽しそうに告げる。
「それは行ってのお楽しみー」
「楽しいんですか? それ、ホントに楽しいですか?」
ちょっと、かなり疑わしいですけどと言い、明子は腕を組んで、少しだけ上目遣いで牧野を睨む。
牧野は「楽しい楽しい」と、そんな明子を茶化した。
「ひっくり返りそうなくらい、楽しいぞ」
「仕事の話なら、会社でしてくださいよ」
牧野のその言いように、仕事の話に違いないと決め込んだ明子は「いやですよ、行きませんよ」と、頬を膨らませる。
「仕事の話じゃねえよ」
「じゃ、なんです? もう、これ以上、妙なことに巻き込まれたくないんですけど」
「それは行ってのお楽しみ」
「やめようかー。行きたくないかもー」
いやだなー。やだやだー。
勿体ぶって話そうとしない牧野に焦れて、明子は駄々を捏ねるように、そんなことを言い出してみた。
「行くって言ったろ」
「拒否る権利を行使します」
「却下。そんな権利は強奪する」
「横暴だー。労働者の権利をー」
「労使交渉じゃねえっつうの。仕事の話じゃねえから、警戒すんなよ」
そこまで言ってもまだ胡散臭そうに牧野を見ている明子の目に、お前なあと牧野は肩を落とす。
「そこまで疑うなって」
「だって。そういうときの牧野さんは、絶対、なんか良からぬことを企んでるときですもん。不安なんです」
「企んでなんか、いねーっていうの。ちょっとな。渡したいものがあるんだよ」
「渡したいもの?」
なんですかと眉を寄せて首を傾げる明子に、牧野は内緒だと口をへの字に曲げる。