リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
牧野が望む形で側にあろうと、ホンの数時間前に、そう決意したばかりだと言うのに、もう、それが苦しいと、心が零す。
恋を恋のまま、まっすぐに伝えられる二人になりたいと、心が泣く。

牧野が自分に向けてくれているその感情を、愛情だと信じたいと、そう願う自分がいる。
けれど、友情なのかもと思う自分に、違うと言うこともできない。
牧野にとって、自分は、一体なんなのだろう。
それを考え出してしまうと、泣きたいのか、笑いたいのかもさえも、判らなくなってしまう。
そんな感情に飲み込まれる。


‐ちゃんと考えて、全部、もう吹っ切ってくれよ。
‐俺と一緒に前に進もう


抱きしめられた腕の中で。
耳元で囁かれた言葉に、明子の心が惑う。
うずうずと。
ずきずきと。
疼くような痛みを与えて、明子の心を惑わせる。


(私が、過去をぜんぶ吹っ切れたら……)
(どうなるの、私たち?)
(迷うことも、苦しくなることも、悲しくなることも、逃げ出したくなることも、なくなるの?)
(この恋を、あなたは受け入れてくれるの?)


そんなことを、心の中の牧野の笑顔に問いかける。
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