リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
牧野が吹っ切ってくれと言った、その恋は。
忘れたと言うにはまだ早い、癒えない傷を明子の中に残していった。
かつて、自分を抱きしめてくれていたあの腕は、牧野のことを諦めた自分が選んだ腕だった。
人に寂しいを言えない明子に、寂しいと言っていいと。
人に涙を見せられない明子に、泣いていいよと言って。
明子を丸ごと受けてくれた腕だ。
牧野のことを諦めたことを、それで良かったのだと思わせてくれた腕だ。
その腕を、ある日、突然に失ったその喪失感を、埋めてくれるものはなにもなかった。
その喪失感を埋めてくれる物も、人も、なにもなかった。
ないから、仕事で埋めようとしていた。
ないから、孤独に慣れようとしていた。
そんな日々の中で、それでも、忘れたことは、ない。
あの日から、心のどこかでずっと考えていた。
どうして、私たちはこんな結末になってしまったのだろうと。
何事もなければ、今頃、あの人の子どもをこの腕に抱いていたのは、自分だったのかもしれないのにと。
そんな思いが、何度も何度も明子の胸に去来して、去っていった男のことを、ずっと、引きずったまま、明子は、また一人でいることに慣れていこうと、自分に言い聞かせてきた。
忘れたと言うにはまだ早い、癒えない傷を明子の中に残していった。
かつて、自分を抱きしめてくれていたあの腕は、牧野のことを諦めた自分が選んだ腕だった。
人に寂しいを言えない明子に、寂しいと言っていいと。
人に涙を見せられない明子に、泣いていいよと言って。
明子を丸ごと受けてくれた腕だ。
牧野のことを諦めたことを、それで良かったのだと思わせてくれた腕だ。
その腕を、ある日、突然に失ったその喪失感を、埋めてくれるものはなにもなかった。
その喪失感を埋めてくれる物も、人も、なにもなかった。
ないから、仕事で埋めようとしていた。
ないから、孤独に慣れようとしていた。
そんな日々の中で、それでも、忘れたことは、ない。
あの日から、心のどこかでずっと考えていた。
どうして、私たちはこんな結末になってしまったのだろうと。
何事もなければ、今頃、あの人の子どもをこの腕に抱いていたのは、自分だったのかもしれないのにと。
そんな思いが、何度も何度も明子の胸に去来して、去っていった男のことを、ずっと、引きずったまま、明子は、また一人でいることに慣れていこうと、自分に言い聞かせてきた。