リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
けれど、牧野は言う。
全てを吹っ切って、一緒に進んでくれと。


(一緒にって、いつまで? どこまで? 二人で進むの?)
(あの人を吹っ切るほど、あなたのことを、また好きになっても、いいの?)
(今度こそ、この恋心を、あなたも、受け入れてくれるの?)


そんな思いが、ずっと、明子の思考回路でぐるぐると回り続けていた。
抜け出すための条件を早く与えないと、ずっと回り続ける、出口のない永久ループになりそうだった。

焦がすことなく、綺麗なあめ色になった玉ねぎを見て、明子は鍋に水を注いだ。
固形状のスープの元を入れ煮込んでいく。

その香りに、腹の虫がぐるぐると鳴いた。
永久ループがぴたりと止まる。
いや。
止めた。
止めなければと、必死にブレークポイントを作って、抜け出すポイントをねじ込んだ。

どうやら、そろそろ本格的に、お腹が空き始めてきた気配に、思考の全てを夕飯に向けた。


マグロととホタテで海鮮丼でしょ。
野菜足りないから、キュウリをゴマで和えて、添え物にしよう。
きんぴらも、明日のお弁当の分だけ残して、食べてしまおう。
とろろ昆布に、お醤油と昆布茶でお吸い物を作って。
お弁当用の惣菜、少し作っておかなきゃ。
スープはオニオンスープができたから、これでよし。
あとは……‐


頭の中から牧野のことを追い出そうと、半ば意地のようにそんなことを考えて、ガスの火を止めて振り返った。
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