リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そうなの。食堂に行ったら、もう、いっぱいで。出遅れちゃった」
失敗失敗と言いながら、肩を竦めた明子がそう答えると、「向こう、空いてますよ」と、木村が会議室を指差した。
「ウチ、けっこう、食堂から離れてるじゃないですか。一度、下に降りてから東館に渡って、また上にあがってでしょ。ちょっと出遅れると座れないんですよね。だから、弁当組は会議室で食べてるんですよ」
したり顔でそう言う木村は「主任も、一緒に向こうでどうですか」と、誘いの言葉を続ける。
(そう言えば……)
(そんな話を、誰かから聞いたっけ、前に)
(もう、お弁当を作ってくることなんて、ないと思ってたから、適当に聞き流していたわ)
うろ覚えながらも、聞いたような覚えがあるその話に明子は頷いて「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな」と、木村に続いた。
会議室とはいうものの、そんな大層な部屋ではない。
大きなホワイトボードが壁際にあり、下辺と上辺が長いコの字型に長い机が並べられ、その机一つにつき、それぞれに椅子が三つずつ置かれていた。
チーム内での打ち合わせや、月に一度、第二システム部の役職付き社員が集まって月例会議をしたりする、パーティションで区切られた少し手狭な空間だ。
そこに木村に続いて入ると、すでに先客が三名いた。
そのうちの一人を見て、明子の足が思わず止まった。
失敗失敗と言いながら、肩を竦めた明子がそう答えると、「向こう、空いてますよ」と、木村が会議室を指差した。
「ウチ、けっこう、食堂から離れてるじゃないですか。一度、下に降りてから東館に渡って、また上にあがってでしょ。ちょっと出遅れると座れないんですよね。だから、弁当組は会議室で食べてるんですよ」
したり顔でそう言う木村は「主任も、一緒に向こうでどうですか」と、誘いの言葉を続ける。
(そう言えば……)
(そんな話を、誰かから聞いたっけ、前に)
(もう、お弁当を作ってくることなんて、ないと思ってたから、適当に聞き流していたわ)
うろ覚えながらも、聞いたような覚えがあるその話に明子は頷いて「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな」と、木村に続いた。
会議室とはいうものの、そんな大層な部屋ではない。
大きなホワイトボードが壁際にあり、下辺と上辺が長いコの字型に長い机が並べられ、その机一つにつき、それぞれに椅子が三つずつ置かれていた。
チーム内での打ち合わせや、月に一度、第二システム部の役職付き社員が集まって月例会議をしたりする、パーティションで区切られた少し手狭な空間だ。
そこに木村に続いて入ると、すでに先客が三名いた。
そのうちの一人を見て、明子の足が思わず止まった。