リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そう言えば、小杉主任と課長って、同期なんだよね」
ふと思い出したというようにそう尋ねてきた松山に、明子は深々と頷いた。
「そうなんですよ。もう、昔から、口が悪くて悪くて。何度泣かされてきたことか。最近、やっとですよ。なにを言われても、平気になったのは」
「小杉の泣いた顔なんぞ、一度たりとも見た記憶がねーよ」
お前がそんなしおらしい玉かと、牧野は鼻を鳴らすように笑う。
(見せて、たまりますか)
(私のしおらしいところを知らないのは、あなたくらいですよっ)
(バカッ)
胸の中でそう毒づきながら「そうでしたか」と、明子は空とぼけた。
「牧野課長って、ホントに昔から毒舌キャラだったんですねえ。へえ」
「毒舌じゃない牧野さんなんて、もう想像つかないだろ。それこそ一大事だよ。ヘンに優しいと、今はかえって不気味じゃないか。こうやって毒を吐きまくっていてくれたほうが、安心だよ」
妙なところに感心している木村に、沼田は訥々とした口ぶりでそんな言葉を掛けた。
「そうだねえ。毒舌じゃなくなって、丸くなっちゃった牧野課長は、もう牧野課長じゃないねえ」
「でも、僕、課長のそういうキャラを知ったの、最近ですよ」
「そうだね。去年までは静かで、ちょっと怖い雰囲気がある人でしたもんね、牧野課長。僕は、今の方が話しやすくていいですよね」
意味ありげに笑いながら牧野にそんなことを言う松山に対して、牧野は軽い咳払いをして押し黙った。
(やっぱり、最終的にはこうやって、皆を味方にしてしまうわね)
(牧野メ)
明子は心の中で、牧野に舌を出した。
ふと思い出したというようにそう尋ねてきた松山に、明子は深々と頷いた。
「そうなんですよ。もう、昔から、口が悪くて悪くて。何度泣かされてきたことか。最近、やっとですよ。なにを言われても、平気になったのは」
「小杉の泣いた顔なんぞ、一度たりとも見た記憶がねーよ」
お前がそんなしおらしい玉かと、牧野は鼻を鳴らすように笑う。
(見せて、たまりますか)
(私のしおらしいところを知らないのは、あなたくらいですよっ)
(バカッ)
胸の中でそう毒づきながら「そうでしたか」と、明子は空とぼけた。
「牧野課長って、ホントに昔から毒舌キャラだったんですねえ。へえ」
「毒舌じゃない牧野さんなんて、もう想像つかないだろ。それこそ一大事だよ。ヘンに優しいと、今はかえって不気味じゃないか。こうやって毒を吐きまくっていてくれたほうが、安心だよ」
妙なところに感心している木村に、沼田は訥々とした口ぶりでそんな言葉を掛けた。
「そうだねえ。毒舌じゃなくなって、丸くなっちゃった牧野課長は、もう牧野課長じゃないねえ」
「でも、僕、課長のそういうキャラを知ったの、最近ですよ」
「そうだね。去年までは静かで、ちょっと怖い雰囲気がある人でしたもんね、牧野課長。僕は、今の方が話しやすくていいですよね」
意味ありげに笑いながら牧野にそんなことを言う松山に対して、牧野は軽い咳払いをして押し黙った。
(やっぱり、最終的にはこうやって、皆を味方にしてしまうわね)
(牧野メ)
明子は心の中で、牧野に舌を出した。