リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「勤勉な課長さん。あれの花言葉はなんですか?」

島野がポインセチアを指差しながら、牧野をそんなことを尋ねる。

「花言葉?」
「おや? ご存知ない?」
「知ってますけど。なんで、そんなことが知りたいんですか?」
「理由が必要ですか? やっぱり、ご存じないんですね」
「『闘志』ですよ」

売り言葉に買い言葉のようなそのやり取りを聞いていた明子は、牧野のその言葉に、また吹き出した。


(闘志、か)
(そうか、闘志、か)
(なるほど)
(私の心は燃えているを、牧野さんは闘志と言うのね)
(なるほどねえ。牧野さんらしいなあ)


いかにもの牧野らしい言葉に、ゆるんだ頬が戻らない。

「なんだよ」

笑い出した明子に、牧野は何がおかしいと、ふて腐れたように尋ねる。

「いや。課長らしい言葉のチョイスだなあと」
「あ?」
「燃えている心を、闘志と簡潔にまとめて言うあたり。さすがです」
「確かに。らしいな」

明子に同意した小林も、くつくつと肩を揺らして笑った。

「闘志か。あまり、女性に贈るには向かないな」

島野のそんな呟きに、そういうことかと牧野は笑う。
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