リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「祝福するって意味もありますから、お祝い事にも向いてますよ」
「へえ。そうなんだ。いいこと聞いたな」
「またのご用命は、いつでもお待ちしておりますので。バラでも、芍薬でも」
「ははは。懐かしいな。今じゃ、花を贈る相手もいない、寂しい生活しているからなあ」
「懐かしいって。確か、広島行く前に、白の紫陽花で花束を、たっぷりとご用意した記憶がありますがね」
「あれは、どこに持っていっても喜んで貰えたなあ。紫陽花を花束にするって発想は、なかったなあ。餅は餅屋というか、門前の小僧というか。さすがだな」
「あの真っ白の紫陽花が出回るのは、時期的にブライダルシーズンなんで、けっこう、花嫁のブーケとかに使われる人気の花なんですよ」
「なるほど。また意表を突きたいときは、ご相談させてもらいます」
「島野。お前のそのマメさだけは、感心するよ。ホントに」

二人の会話を聞いていた小林が、しみじみとそんなことを言う。

「モテ男と色男に結託されたら、根こそぎ持ってかれるな」

君島も、やれやれと首を振りながら苦笑していた。
島野と話しながら、牧野はなにかを思いついたらしく、窓辺のポインセチアを手に取ると、木村の机に置いた。

「ささやかな祝いの品だ。受け取れ」
「あざーっす」

祝いの品とは、どういう意味だろうと首を傾げている明子たちを見て、木村は頭を掻きながら宣言した。

「結婚することになりました。二月末の土曜に式を挙げます。よろしくお願いします」

一瞬の沈黙の後。
どよめきと拍手が沸き起こった。
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