リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「もう少し早めに、病院に押しかけて、あのバカと話しをしてくりゃよかったんだけどな。つい、俺もキレちまって、見舞いにも行かなかったからな」
ちと、失敗した。
そんな殊勝な言葉とは裏腹に、牧野のその表情には、まったく反省している様子がなかった。
喉を撫でられ気持ちよさそうにしている猫のように、体を小さく横に振りながら嬉しそうに目を細めている牧野は、サバの味噌煮で作った竜田揚げに旨い旨いを繰り返し、瞬く間に平らげていった。
それを見ている限りでは、大塚のことなど微塵も考えていないようだった。
(もう。子どもですか、牧野さん)
(食べているときの子どもっぷりは、ずっと変わらないんだから)
(困った大人だわ)
ちらりと横目で眺めた、ご飯に夢中な子どもになっているその姿に、明子は軽い眩暈を覚えるように息を吐いた。
「大塚さんがしでかそうとしていたことは、どこまで事実です? ホントに手柄目的なら、やっぱり許しません」
今度会ったら、えいやーと、背中にアンパンチしてやります。
そう言って、握った拳を前に突き出すようなファイティングポーズを取る明子に、だから金太郎って言われんだよと、牧野は呆れる。
「なんかな。吉田係長が絡んで、面倒なことにしちまったって感じだな。大塚と君島さんの話を合わせると」
食べることに夢中にはなっているが、話を聞かせようと言う気持ちはなるらしく、食べる合間に、ぽつりぽつりと今回の一件について、牧野は語り始めた。
「少なくとも、俺に土建屋の話を持ってきたのは、吉田係長の考えだ。大塚は、むしろ止めていたらしい。あんたが仕切るなら、それでいいから、牧野には絡むなって。潰されるぞと、釘は刺せるだけ刺したらしいぞ。まあ、吉田係長としては、大塚も仲間って意識だったのかもしれないけどな」
手柄を焦っていたのは、吉田係長だけだったみたいだなと言って肩を竦めた牧野は、困った人だよとぼやいた。
ちと、失敗した。
そんな殊勝な言葉とは裏腹に、牧野のその表情には、まったく反省している様子がなかった。
喉を撫でられ気持ちよさそうにしている猫のように、体を小さく横に振りながら嬉しそうに目を細めている牧野は、サバの味噌煮で作った竜田揚げに旨い旨いを繰り返し、瞬く間に平らげていった。
それを見ている限りでは、大塚のことなど微塵も考えていないようだった。
(もう。子どもですか、牧野さん)
(食べているときの子どもっぷりは、ずっと変わらないんだから)
(困った大人だわ)
ちらりと横目で眺めた、ご飯に夢中な子どもになっているその姿に、明子は軽い眩暈を覚えるように息を吐いた。
「大塚さんがしでかそうとしていたことは、どこまで事実です? ホントに手柄目的なら、やっぱり許しません」
今度会ったら、えいやーと、背中にアンパンチしてやります。
そう言って、握った拳を前に突き出すようなファイティングポーズを取る明子に、だから金太郎って言われんだよと、牧野は呆れる。
「なんかな。吉田係長が絡んで、面倒なことにしちまったって感じだな。大塚と君島さんの話を合わせると」
食べることに夢中にはなっているが、話を聞かせようと言う気持ちはなるらしく、食べる合間に、ぽつりぽつりと今回の一件について、牧野は語り始めた。
「少なくとも、俺に土建屋の話を持ってきたのは、吉田係長の考えだ。大塚は、むしろ止めていたらしい。あんたが仕切るなら、それでいいから、牧野には絡むなって。潰されるぞと、釘は刺せるだけ刺したらしいぞ。まあ、吉田係長としては、大塚も仲間って意識だったのかもしれないけどな」
手柄を焦っていたのは、吉田係長だけだったみたいだなと言って肩を竦めた牧野は、困った人だよとぼやいた。