リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
4.お待ちかねの月曜、夜
明子が帰宅したのは、二十二時を少し過ぎたころだった。
予定では、今日はもっと早い時間での帰宅になれるはずだった。
けれど、午後からいきなり飛び込んできたはた迷惑な仕事で、その予定は大幅に狂い、この時間の帰宅なってしまった。
先週、若干のカスタマイズ作業の依頼を受けていた客先の業務ソフトを入れ替えたのだが、その客先から、納品書が出なくなったという電話が入った。
担当の木村が、その電話対応にあたっていたのだが、先方は出ないの一点張りで、とにかく見に来いと言うだけだった。
どうにも埒が明かないということで、客先に行って確認してくる役目を、明子は牧野から仰せつかってしまったのだ。
ーまたですか?
ーいつもの勘違いですよ。
喉元まで出掛かったその言葉を飲み込んで、車で三十分ほどのその客先に行ってきますと告げて、明子は会社を出た。
できないことなら、牧野も納得する。
行ってこいなどとは、決して言わない。
けれど、できることを、面倒くさいだの時間がないだの、そんなことを理由に手を抜くことを牧野は嫌う。
うっかりにもそんな事を口にしようものなら、烈火のごとく、相手を叱り飛ばす。
それを知っているから、喉の奥で絡まっているイヤを、明子は飲み込んだ。
ーいつもみたいに、おやつをたんまりと食ってくるんじゃねーぞ。
ー昼飯を減らしても、意味ねーぞ。
ぼそりと、傍らに立った明子にしか聞き取れないような小声で、そんな嫌味を吐き捨てた牧野に、思わずキレそうになりながら、明子は会社を出た。
予定では、今日はもっと早い時間での帰宅になれるはずだった。
けれど、午後からいきなり飛び込んできたはた迷惑な仕事で、その予定は大幅に狂い、この時間の帰宅なってしまった。
先週、若干のカスタマイズ作業の依頼を受けていた客先の業務ソフトを入れ替えたのだが、その客先から、納品書が出なくなったという電話が入った。
担当の木村が、その電話対応にあたっていたのだが、先方は出ないの一点張りで、とにかく見に来いと言うだけだった。
どうにも埒が明かないということで、客先に行って確認してくる役目を、明子は牧野から仰せつかってしまったのだ。
ーまたですか?
ーいつもの勘違いですよ。
喉元まで出掛かったその言葉を飲み込んで、車で三十分ほどのその客先に行ってきますと告げて、明子は会社を出た。
できないことなら、牧野も納得する。
行ってこいなどとは、決して言わない。
けれど、できることを、面倒くさいだの時間がないだの、そんなことを理由に手を抜くことを牧野は嫌う。
うっかりにもそんな事を口にしようものなら、烈火のごとく、相手を叱り飛ばす。
それを知っているから、喉の奥で絡まっているイヤを、明子は飲み込んだ。
ーいつもみたいに、おやつをたんまりと食ってくるんじゃねーぞ。
ー昼飯を減らしても、意味ねーぞ。
ぼそりと、傍らに立った明子にしか聞き取れないような小声で、そんな嫌味を吐き捨てた牧野に、思わずキレそうになりながら、明子は会社を出た。